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自己破産すると処分されてしまう財産とは?

処分されない財産(自由財産)について

 「自己破産をすると家電や衣類はすべて回収されるのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。自己破産をした場合,債務者が有していた財産は破産管財人によって処分されますが,処分しなくてもよい財産(自由財産)が認められています。

 破産手続きは、本来、破産管財人が、破産者が持っている全財産を処分するなどして換価し、破産者の債権者に対して平等に配当することを主な目的としています。

 しかしながら,自己破産をしたからといって、すべての財産が処分されてしまうわけではありません。法律上、破産者の経済的更生のために一定の財産は処分されないものとされています。その財産のことを「自由財産」といいます。自由財産と認められたもの以外の財産は,破産財団に属することとなり管財人により換価がなされます。

 「自由財産」となり処分がなされない財産には,以下の①本来的自由財産,②裁判所によって自由財産の拡張が認められた財産,③破産管財人によって破産財団から放棄された財産の3つがあります。

本来的自由財産

 以下のものは本来的自由財産とされており,換価処分されることはありません。

⑴ 破産手続開始決定後に取得した財産(新得財産) 

 破産手続開始決定後の給与などは破産財団には属さず,破産手続きの中で回収されてしまうことはありません。

⑵ 生活必需品など法律により差押が禁止されている財産

 生活に欠くことができない衣服・寝具・家具・冷蔵庫やテレビなどの家電が処分されることはありません。

⑶ 99万円以下の現金

 99万円以下の現金は自由財産とされています。ただし,預貯金で保管している場合は,現金とは異なる取り扱いがなされます。

裁判所によって自由財産の拡張が認められた財産

 本来的自由財産ではない財産であっても、裁判所の決定によって、自由財産として取り扱うことができるという制度が設けられています。

 各地の事情により違いはありますが,一般的に①財産の内容が破産者の経済的再生のために必要か(拡張適格財産の審査),②財産の総額が自由財産と許容できる範囲か(99万円枠の審査)の2つの枠組みで,自由財産の範囲を拡張するための運用基準が定められてます。

① 拡張適格財産の審査

 預貯金,保険解約返戻金,自動車,敷金,退職金債権,電話加入権,一定の過払金返還請求権は,定型的拡張適格財産とされています。これらの定型的拡張適格財産に含まれない財産は,原則として拡張適格財産性が認められません。

② 99万円枠の審査

 99万円以下の現金が本来的自由財産として当然に破産財団に属さないこととの均衡から,現金及び拡張適格財産の合計額が99万円以下の場合には,原則として拡張申立てを認めるという審査基準ないし運用が広く浸透しています。他方で,99万円を超える部分については,破産者の生活状況や今後の収入の見込み,拡張を求める財産の種類・金額,その他個別的な事情に照らして,99万円超過部分の財産が破産者の経済的再生に必要不可欠であるという特段の事情が認められる場合のみ,例外的に自由財産拡張が認められます。

 財産の評価方法については,原則として時価額で評価しますが,自動車については,普通自動車は初年度登録から7年以上,軽自動車・商用普通自動車は5年以上経過していれば,無価値と評価されます。生命保険については,破産開始決定時の解約返戻金の金額が資産価値とみなされます。

 以上のとおり,99万円の枠までの財産は,自由財産と認められることが一般的ですので,自己破産によって何もかもとられてしまって,生活ができなくなってしまうというようなことはありません。

破産財団から放棄された財産

 破産財団に組み入れられた財産であっても,簡単には換価処分できないという財産(田舎の土地など)は少なくありません。このような財産については,換価処分に時間がかかり,調査費用や保管費用によって逆に破産財団が減少してしまいます。そのため,破産管財人は,裁判所の許可を得て,こういった換価処分が不可能ないし困難な財産を破産財団から除外する措置をとることができます。この破産管財人による措置のことを,「破産財団からの放棄」といいます。

 破産財団からの放棄がなされた財産は,自由財産となり,破産しても処分されないことになります。

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